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2009年10月20日 (火)

インフルエンザワクチンは鼻から?

ポッドキャストによるアメリカABCニュースを見ていると、インフルエンザウイルスワクチンを鼻に接種しています。日本の場合、ワクチンは注射しますよね。

誰しも注射は嫌ですから、鼻にプシュっとするだけでワクチン接種が終われば楽ちんです。

どうしてアメリカで認可されているワクチンが日本では使われていないのでしょうか。こんな話を人としていたら、日本の厚生労働省がアホだから、仕事してないから認可しないんだとある人が言いました。ちょっと待てよ。それは言いすぎでしょう。むしろ、間違った認識です。

アメリカで認可されているワクチンはFlumistという製品で、弱毒化生ワクチンです。これは、インフルエンザウイルスを鼻に噴霧するものです。インフルエンザウイルスは体内に入り、それが抗原となってヒトの体内に抗体が作られます。二回目にインフルエンザウイルスが体内に侵入したときには、抗体によって感染が防がれます。弱毒化されているといっても、感染力は残っていますから鼻の粘膜に接種すればウイルスは体内で増殖を始めるわけです。弱毒化しているといっても生ワクチンですから、感染により発熱等の病状が生じる危険性があります。

日本で使われているインフルエンザウイルスは不活化ワクチンです。これは、インフルエンザウイルスに様々な処理を行い感染性をなくし、その成分を抗原として使う方法です。ウイルスとしての体をなしていませんから感染力はありません。それ自体が人の体に入る能力を失っています。よって、鼻粘膜への接種ではなく注射で体内に直接入れてやる必要があります。

抗原として体内に摂取されたウイルス成分が体内で増殖して悪影響を及ぼすということはありません。それに対してアレルギー反応を起こすという危険性はありますが、ウイルス成分が体内で増殖したとすればアレルギーについての心配は生ワクチンでも同じでしょう。また、インフルエンザワクチンの製造には卵が使われていますから、卵アレルギーの心配もあります。

生ワクチンと不活化ワクチンの違いは接種可能者の違いにも表れます。前者の場合、インフルエンザ関係の合併症の危険がある人、妊婦、免疫機能の弱っている人には投与できません。

生ワクチンを使用するのか、不活化ワクチンを使うのか。それぞれ長所と短所があり、その使用や認可には国民性の問題や保険行政の舵取りなど様々な要因が影響しているはずです。どちらが一方がベストであるというものでもありません。

インフルエンザウイルスのワクチンは季節性の製品です。インフルエンザウイルスのタイプを予測したら一気に生産し、一気に全国に配布するロジスティックスは、普段われわれの目には触れませんが、蔭ではすごいことが行われているはずです。

生ワクチンと不活化ワクチンの両方を供給する体制を作るのか、二つのワクチンの有効性と安全性の違いはどうなのか。掘り下げてみるといろいろ面白い話が出てきそうなインフルエンザワクチンです。

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薬学」カテゴリの記事

コメント

いつも思うのですが、インフルエンザワクチンって効くんですか?だってウイルスの変異は早いんでしょう?
自分はこの20年くらいでインフルエンザで苦しんだのは一度きりです。2回ほどそれらしいことはありましたが、すぐ治りましたんで、カウントしなくていいでしょう。ワクチンもしたことありません。
ワクチンの副作用のほうが怖いですけどね~。

投稿: ま | 2009年10月20日 (火) 22時42分

まさま、こんにちは

多くを語れるほどインフルエンザワクチンについて学んでいるわけではないのですが…。ワクチンにしろ薬にしろ、副作用は多かれ少なかれあります。ワクチン接種によりインフルエンザウイルス感染を防ぐメリットがワクチンの副作用を上回るということを誰かが統計的に示しているはずです。

これはもう、確率的な話になるので、事故は怖いけれど自動車に乗るというような話になります。

健康な人なら、インフルエンザに感染しても数日しんどい思いをすれば治りますから、そう心配する必要も無いと思うんですけれど。

投稿: シュナッペル | 2009年10月21日 (水) 06時30分

はじめまして。「アメリカ ワクチン 鼻」で検索したらヒットしたのでお邪魔します。巷でいろいろな話がでているので正確な情報を教えていただけたら嬉しいです。

・今回のワクチンが効き始めるまでに必要なおおよその日数。
・効果があると思われる日数
・新型fulは年中猛威を振るっていますが、効果が切れたらもう一度ワクチン摂取を受けた方がいいのでしょうか?

観音寺町の工場が早くできるといいですね。

投稿: ちぃ。 | 2009年11月21日 (土) 08時48分

ちぃ。さま、こんにちは

新型インフルエンザ、ますます猛威をふるいそうですね。

ご質問の件ですが、

1)ワクチンを接種してから免疫系が活性化されるまでの日数はおよそ4~6日です。ですから、それ以前にインフルエンザワクチンが体内にはいると、感染が成立する可能性があります。

2)およそ20年から30年かと考えられます。外来からの異物(今回の場合はインフルエンザワクチン)に対して免疫が成立すると、それは長期にわたって記憶されます。ですから、二回目に異物が体内に入ってきたときには防御システムが働きます。その効果は一生続くとも考えられていますが、実際に調べてみると数十年後には抗原に対する免疫力は弱ってくるらしいです。
 さて、ワクチンは特定の細菌やウイルス、今回の場合はいま問題となっている新型インフルエンザに対してしか効き目がありません。ですから、ウイルスが変異してしまった場合、今回摂取したワクチンは全く効き目を持ちません。ウイルスがいつ変異するかは全く予想が付きません。20年から30年という答えは、あくまで今回の新型インフルエンザに対する有効期間ということになります。

3)今回摂取した新型インフルエンザのワクチン効果が切れる頃には、このインフルエンザウイルスは下火になっていると考えられます。問題となるのは、変異してしまったウイルス、または全く新しい系統から派生してきたインフルエンザウイルスでしょう。ですから、効き目が切れたときに同じワクチンを接種することはほとんど意味がありません。
 その時に流行しそうな、または流行しているインフルウイルスに対するワクチンを接種してください。
 また、インフルエンザウイルスのワクチンはその時に流行している、または、そのシーズンに流行しそうなウイルスの型に対するワクチンしか生産・供給されません。数十年後に2009年に流行したウイルスに対するワクチンを接種してくださいという現実的には不可能です。

薬学部で勉強中の学生の答えですので、もしかしたら間違ってるかもしれませんが、その時はご容赦願います。

これから、空気も乾燥して寒い時期となります。インフルエンザウイルスにとっては感染に有利な季節になります。

ちぃ。さんもどうぞお体を大切に。

投稿: シュナッペル | 2009年11月21日 (土) 20時01分

シュナッペルさま。

とても丁寧な回答ありがとうございます。私、めちゃ勘違いしてました。ワクチンは2~3ヶ月しか効かないって聞いたような気がして。で、大学受験の時は何月に打てばいいのか悩んでいたんです。(笑)でも打つなら鼻からの痛くないのがいいなぁって。
今回一度に両方の疑問が解決されました。ありがとうございました ♪

投稿: ちぃ。 | 2009年11月23日 (月) 09時26分

おぉ、受験生の方ですか。

健康に注意しながら勉強がんばってくださいね。

投稿: シュナッペル | 2009年11月23日 (月) 10時48分

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